ADCの概要
アナログデジタル変換器(Analog Digital Converter)は、ADCと呼ばれ、アナログ信号をデジタル信号に変換する変換器です。
ADCは、フラッシュ型、逐次比較型、パイプライン型、ΔΣ型、二重積分型等の様々な種類の方式があり、方式によって周波数帯域(変換速度)、分解能(変換精度)が異なります。
本頁では、二重積分型ADCについて解説します。
二重積分型ADC
測定原理
入力信号V_{in}を一定時間T_{in}秒間、積分器で積分し、積分器の出力電圧がV_{sig}となります。
次に、基準電圧V_{ref}を積分します。V_{sig}=0Vとなって比較器が反転するまでの時間をT_{ref}秒とします。
基準電圧V_{ref}と、測定した時間T_{in},T_{ref}から、測定対象の電圧V_{in}が
\displaystyle V_{in}=\frac{T_{ref}}{T_{in}}V_{ref}
と計算されます。
長所
周波数が低い信号の測定精度が高い。特に、直流電圧の精密な測定に向いている。
短所
測定できる信号の周波数は低く、数百Hz程度までしか測定できない。

回路動作の流れ

①測定したい入力信号V_{in}を積分器に入力する。
②T_{in}秒の時間経過をカウンタ回路で数える。
→

③T_{in}秒経過後、カウンタ回路からコントロール回路に、時間経過したことを知らせる信号を送る
↙

④コントロール回路が、入力スイッチを切替える
→

⑤逆電圧の基準電圧V_{ref}を積分器に入力して逆積分を開始する。
↙

⑥積分器の出力電圧がV_{sig}=0となる。
→

⑦V_{sig}≧0となることで、比較器の出力が反転する。
↙

⑧カウンタ回路が、比較器からの反転出力を受け取ることで、測定が完了する。
入力信号の電圧が
\displaystyle V_{in}=\frac{T_{ref}}{T_{in}}V_{ref}
と、求まる。
→

⑨測定完了のため、コントロール回路に回路状態を初期化する操作をするための信号を送る
↙

コントロール回路が、回路状態を初期化する。その後、①に戻る。
測定値の計算
積分器の出力は、次のグラフのように変動します。

最初に、入力電圧V_{in}を積分したとき、入力電圧は+電圧であるため、反転して-電圧が積分されていきます。
積分器の出力電圧V_{sig}は、
\displaystyle V_{sig}=-\frac{V_{in}}{CR}t
です。
T_{in}秒積分した結果の積分器の電圧V_{sig1}は、次のように求まります。
\displaystyle V_{sig1}=-\frac{V_{in}}{CR}T_{in}

次に、基準電圧-V_{ref}を積分します。基準電圧は-電圧であるため、反転して+電圧が積分されていきます。
初期電圧はV_{sig1}なので、積分器の出力は次式となります。
\displaystyle V_{sig}=V_{sig1}+\frac{V_{ref}}{CR}t
T_{ref}秒積分したとき、V_{sig}=0となり、比較器が反転動作して測定が完了します。
この時のV_{sig}からV_{in}を求めることができます。
\displaystyle V_{sig}=V_{sig1}+\frac{V_{ref}}{CR}T_{ref}=0
➡ \displaystyle 0=-\frac{V_{in}}{CR}T_{in}+\frac{V_{ref}}{CR}T_{ref}
➡ \displaystyle \frac{V_{in}}{CR}T_{in}=\frac{V_{ref}}{CR}T_{ref}
➡ \displaystyle V_{in}=\frac{T_{ref}}{T_{in}}V_{ref}
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参考書
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