概要

電子回路には、様々な用途でコンデンサが使用されます。
電験の問題では、問題の回路中にコンデンサが付いているけど、特に触れないということがあります。
計算上には特に出てこないコンデンサではありますが、問題を考える上で重要な意味があります。
これらのコンデンサについて、説明していきます。
カップリングコンデンサ
カップリングコンデンサは、直流成分をコンデンサで遮断し、交流成分のみを通過させるコンデンサです。

小信号回路と小信号回路を結合するために使用されるので、カップリング(結合)コンデンサと名前がついています。
増幅回路のような小信号回路の動作条件はトランジスタによって異なります。
そのため、【直流成分+交流成分】となった状態で、後段の小信号回路に信号を送ると、動作に影響を与えることがあります。
そのため、カップリングコンデンサで結合することで、交流信号のみを送ることができるようになります。

左図の左側の波形イメージは、直流成分+交流成分の波形です。
カップリングコンデンサを通すことによって、直流成分が取り除かれ、交流成分だけとなった波形が右側の波形イメージです。
デカップリングコンデンサ
デカップリングコンデンサは、交流成分をコンデンサで除去し、直流成分のみを通過させるコンデンサです。

電源にノイズが乗ってしまうと、電源電圧が変動するため、回路が予定していない動作をしてしまう可能性があります。
その対策として、デカップリングコンデンサを使用して、電源ラインに乗ってしまったノイズを除去をします。
デカップリングコンデンサは、コンデンサの交流成分のみを通過させる特性を利用するコンデンサの使い方です。
直流成分は回路の電源として送り出し、交流成分(ノイズ)は、デカップリングコンデンサを通してグラウンドに逃がします。

左図の左側の波形イメージは、直流成分+交流成分の波形です。
デカップリングコンデンサを通すことによって、交流成分が取り除かれ、直流成分だけとなった波形が右側の波形イメージです。
デカップリングコンデンサは、コンデンサの容量によって周波数特性が異なります。
そのため、低減したいノイズの周波数に合わせて容量を選定する必要があります。
シビアなアナログ回路設計をする場合は、同じ静電容量のコンデンサを並列接続することで、インピーダンスを下げることを検討することもあります。
バイパスコンデンサ
本項目で説明するバイパスコンデンサは、デカップリングコンデンサの一種です。
また、デカップリングコンデンサをパスコンと呼ぶこともあります。

ソース抵抗\(R_s\)とセットで使われるのがバイパスコンデンサ\(C_s\)です。
\(R_s\)を接続すると、ソース端子の電圧\(V_s\)が
\(V_s=R_s・(I_d+i_d)\)
だけ上昇します。
\(I_d\)はソース電流の直流成分
\(i_d\)はソース電流の交流成分です。
交流成分である\(i_d\)がソース電圧\(V_s\)にあると、上式に示した通り、入力信号によって\(V_s\)も変動してしまいます。
その結果、MOSFETへの入力である\(V_{gs}\)が変動することとなり、出力信号に不要なノイズが乗ってしまいます。
コンデンサは直流成分は通さないですが、交流成分は通すという特性があることから、ソース抵抗\(R_s\)と並列にバイパスコンデンサ\(C_s\)を接続することで、次の2つの効果が得られます。
・直流的にはコンデンサ\(C_s\)は無いものとして扱える。
・交流的にはソース抵抗\(R_s\)が無いものとして扱える。
その結果、ソース端子の電圧\(V_s\)が\(V_s=R_s・I_d\)となり、ノイズを除去できます。
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