静電気力F(クーロン力)

静電気力(クーロン力) 理論

概要

静電気力(クーロン力)の基本的な性質と、大きさの計算に関する解説をします。
また、静電気力の計算では、ベクトルの計算も欠かすことができないので、一緒に解説をしていきます。

 

 

静電気力(クーロン力)について

一様な電界Eの中で働くクーロン力F[N]

電界\(E[V/m]\)の中に\(q[C]\)に帯電した物体が置かれているとき、物体には力が働きます。この働く力を静電気力(クーロン力)と呼び、その大きさ\(F[N]\)は、次式で表されます。
\(F=qE\)

電界\(E\)の中にある正電荷\(q[C]\)には、電界の向きと同じ方向に、静電気力が働きます。

電界\(E\)の中にある負電荷\(-q[C]\)には、電界の向きと逆方向に、静電気力が働きます。

   

  

  

2つの点電荷間に働くクーロン力F[N]

クーロン力の働く向き
・「正電荷-正電荷」「負電荷-負電荷」の符号が同じ時、電荷間に斥力が働きます。
・「正電荷-負電荷」の符号が違う時、電荷間に引力が働きます。

クーロン力の大きさ
二つの点電荷が\(Q[C]\)、\(q[C]\)としたとき、二つの点電荷には、次の式で示されるクーロン力が働きます。
\(\displaystyle F=\frac{Qq}{4πεr^2}\)

同じ符号の電荷間に斥力が働く理由

\(+Q\)・\(+q\)の時
\(+Q\)から放出される電界\(E\)と同じ方向に\(+q\)に静電気力が発生するため、斥力となります。

\(-Q\)・\(-q\)の時
\(-Q\)に吸引される電界\(E\)と逆方向に\(-q\)に静電気力が発生するため、斥力となります。

異なる符号の電荷間に引力が働く理由

\(-Q\)・\(+q\)の時
\(-Q\)に吸引される電界\(E\)と同じ方向に\(+q\)に静電気力が発生するため、引力となります。

\(+Q\)・\(-q\)の時
\(+Q\)から放出される電界\(E\)と逆方向に\(-q\)に静電気力が発生するため、引力となります。

 


二つの点電荷に働くクーロン力の大きさ

① 点電荷\(q[C]\)に働く静電気力の大きさの導出
点電荷\(Q[C]\)が作り出した電界\(E_Q[V/m]\)内に存在する点電荷\(q[C]\)に働く静電気力\(F[N]\)が\(\displaystyle F=\frac{Qq}{4πεr^2}\)であることを導出します。

点電荷\(Q[C]\)が作り出した電界\(E_Q[V/m]\)の大きさは、ガウスの法則から、
\(\displaystyle \oint_S E_QdS=\frac{Q}{ε_0}\)
→ \(\displaystyle E_Q=\frac{Q}{ε_0S}=\frac{Q}{4πε_0r^2}\)

静電気力の大きさの式は\(F=qE_Q\)なので、電界の大きさを代入すると、
\(\displaystyle F=\frac{qQ}{4πε_0r^2}\)
となります。

② 点電荷\(Q[C]\)に働く静電気力の大きさの導出
①と同じく、点電荷\(q[C]\)が作り出した電界\(E_q[V/m]\)内に存在する点電荷\(Q[C]\)に働く静電気力\(F[N]\)が\(\displaystyle F=\frac{Qq}{4πεr^2}\)であることを導出します。

点電荷\(q[C]\)が作り出した電界\(E_q[V/m]\)の大きさは、ガウスの法則から、
\(\displaystyle E_q=\frac{q}{4πε_0r^2}\)

静電気力の大きさの式は\(F=QE_q\)なので、電界の大きさを代入すると、
\(\displaystyle F=\frac{qQ}{4πε_0r^2}\)
となります。

以上、①・②から、\(+Q\)・\(+q\)のどちらの電荷にも、同じ大きさの静電気力\(\displaystyle F=\frac{qQ}{4πε_0r^2}\)が働く事を示しました。

  

  

  

クーロン力の合成

クーロン力を求める問題は、複数の電荷が点在していて、違う方向を向くベクトルの和を求める様な形式の出題が多いです。そのため、クーロン力とベクトルの合成はワンセットで学習しましょう。

  

 

ベクトルの合成

 
 同方向のベクトルの合成

左図のように、同じ方向を向いている力のベクトルが2つあるときのベクトル合成をします。
\(\vec{F_1}\)と、\(\vec{F_2}\)の2つのベクトルがあるとしたとき、合成したベクトルを\(F\)とすると、合成ベクトルの式は、
\(\vec{F}=\vec{F_1}+\vec{F2}\) です。
そして、合成ベクトルの大きさは
\(F=F_1+F_2\)
となります。

  


 方向が違うベクトルの合成

 2つのベクトル\(F_1\)と\(F_2\)があり、それぞれの間に\(θ\)の角度があったとします。

この2つを合成したベクトルを\(F\)とすると、
\(\vec{F}=\vec{F_1}+\vec{F2}\)
です。
次に、ベクトルの大きさを求めます。

\(\vec{F_1}\)が、\(\vec{F}\)と同じ向きに作るベクトルの大きさは、\(F_1cos\frac{θ}{2}\)です。

\(\vec{F_2}\)が、\(\vec{F}\)と同じ向きに作るベクトルの大きさは、\(F_2cos\frac{θ}{2}\)です。

これらを合成すると、\(\vec{F}\)の大きさ\(F\)は、
\(F=F_1cos\frac{θ}{2}+F_2cos\frac{θ}{2}\)
です。

  

  

  

補足

静電気力と重力の比較

電界の中に帯電した物体がある時、その物体には静電気力\(F=qE\)が働きます。
この静電気力\(F\)は、重力\(F=mg\)と比較すると同じような式であることがわかります。
これは、静電気力による位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)と、物質の高さによる位置エネルギーと比較しても同様であることがわかります。

一様な電界重力
\(F=qE\)\(F=mg\)
位置エネルギー\(W=qEd\)\(U=mgh\)

  

  

  

過去問

難易度 ★☆☆☆☆
  電験三種 令和3年度 問2

難易度 ★★☆☆☆
  電験三種 令和4年度上期 問2

難易度 ★★★☆☆
  電験三種 令和5年度下期 問12

難易度 ★★★★☆
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