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インピーダンス2(複素インピーダンス)

複素インピーダンス 交流回路

インピーダンスの関連式 一覧

インピーダンス\dot{Z}[Ω]、抵抗R[Ω]、リアクタンスX[Ω]の関係式
\dot{Z}=R+jX

インピーダンス\dot{Z}[Ω]と、インピーダンスの大きさZ、インピーダンスの位相∠θの関係式
\dot{Z}=Z∠θ

インピーダンスの大きさZ[Ω]、レジスタンス(抵抗)R[Ω]、リアクタンスX[Ω]の関係式
Z=\sqrt{R^2+X^2}

インピーダンスの位相角θ、レジスタンス(抵抗)R[Ω]、リアクタンスX[Ω]の関係式
tanθ=\frac{X}{R}
⇔ θ=tan^{-1}\frac{X}{R}

インピーダンスの加算\dot{Z}_{add}
\dot{Z}_{add}=(R_1+R_2)+j(X_1+X_2)
大きさZ_{add}=\sqrt{(R_1+R_2)^2+(X_1+X_2)^2}
位相角θ_{add}=tan^{-1}\frac{X_1+X_2}{R_1+R_2}

インピーダンスの減算\dot{Z}_{sub}
\dot{Z}_{sub}=(R_1-R_2)+j(X_1-X_2)
大きさZ_{sub}=\sqrt{(R_1-R_2)^2+(X_1-X_2)^2}
位相角θ_{sub}=tan^{-1}\frac{X_1-X_2}{R_1-R_2}

インピーダンスの乗算\dot{Z}_{mlt}
\dot{Z}_{mlt}=Z_1Z_2∠(θ_1+θ_2)
大きさZ_{mlt}=Z_1Z_2
位相角θ_{mlt}=∠(θ_1+θ_2)

インピーダンスの除算\dot{Z}_{div}
\dot{Z}_{div}=\frac{Z_1}{Z_2}∠(θ_1-θ_2)
大きさZ_{div}=\frac{Z_1}{Z_2}
位相角θ_{div}=∠(θ_1-θ_2)

虚数単位jの式
j=\sqrt{-1}
j^2=-1

 

  

複素インピーダンス\dot{Z}

複素インピーダンス(直交座標系)

インピーダンスZ[Ω]は、電流を流れにくくする要素である抵抗R[Ω]と、リアクタンスX[Ω]を足し合わせたものです。
しかしながら、これらは単純に足すことができず、抵抗Rを実軸リアクタンスXを虚軸においた複素平面で表されます。

複素数を使って表したインピーダンスを複素インピーダンス\dot{Z}と呼び、次式で表されます。
\dot{Z}=R+jX
これを複素数平面上に表すと左図のようになります。

インピーダンスの大きさZは、直角三角形の斜辺の長さを求めればよいので、三平方の定理から、次式で表されます。
Z=\sqrt{R^2+X^2}

インピーダンスの位相角θは、インピーダンスZと実軸(抵抗R)のなす角の事です。
この角度は、実軸Rと、虚軸Xの傾きなので、次のように求まります。
tanθ=\frac{X}{R}
θ=tan^{-1}\frac{X}{R}

 

 

複素インピーダンスのフェーザ表示(極座標系)

頭にドットを付けることで、複素インピーダンス\dot{Z}と、インピーダンスZの大きさを明確に区別します。

インピーダンスの大きさZと、位相角∠θを使い、複素インピーダンス\dot{Z}を表す方法を、フェーザ表示と呼び、次のように表されます。
\dot{Z}=Z∠θ

フェーザ表示は、大きさと方向で成り立つベクトルに対して、
 ・大きさの計算
 ・方向の計算
を別々に計算してから、最終的にベクトルを導き出すことができるため計算がしやすいです。
そのため、交流回路の電流・電圧等を解析する際は、フェーザ表示を使用して解答することが必須といって良い程重要です。

直交座標系から、フェーザ表示への変換
複素インピーダンスを直交座標系で示すと、\dot{Z}=R+jX …①
RとXを極座標で示すと、R=ZcosθX=Zsinθ …②
①式に②式を代入すると、\dot{Z}=Z(cosθ+jsinθ) …③
③式にオイラーの公式を使うと、\dot{Z}=Ze^{jθ} …④
e^{jθ}を、∠θとして表すと、\dot{Z}=Z∠θ

以上より、直交座標系\dot{Z}=R+jXから、フェーザ表示\dot{Z}=Z∠θに変換できました。

 

 

複素インピーダンスの計算

\dot{Z_1}=R_1+jX_1\dot{Z_2}=R_2+jX_2の二つの複素インピーダンスがあったとします。このときの、インピーダンスの四則演算は次の通りになります。

加算\dot{Z}_{add}
\dot{Z}_{add}=\dot{Z_1}+\dot{Z_2}=(R_1+R_2)+j(X_1+X_2)
大きさZ_{add}=\sqrt{(R_1+R_2)^2+(X_1+X_2)^2}
位相角θ_{add}=tan^{-1}\frac{X_1+X_2}{R_1+R_2}

減算\dot{Z}_{sub}
\dot{Z}_{sub}=\dot{Z_1}-\dot{Z_2}=(R_1-R_2)+j(X_1-X_2)
大きさZ_{sub}=\sqrt{(R_1-R_2)^2+(X_1-X_2)^2}
位相角θ_{sub}=tan^{-1}\frac{X_1-X_2}{R_1-R_2}

乗算\dot{Z}_{mlt}
\dot{Z}_{mlt}=\dot{Z_1}・\dot{Z_2}=Z_1∠θ_1・Z_2∠θ_2=Z_1Z_2∠(θ_1+θ_2)
大きさZ_{mlt}=Z_1Z_2
位相角θ_{mlt}=∠(θ_1+θ_2)

除算\dot{Z}_{div}
\dot{Z}_{div}=\frac{\dot{Z_1}}{\dot{Z_2}}=\frac{Z_1∠θ_1}{Z_2∠θ_2}=\frac{Z_1}{Z_2}∠(θ_1-θ_2)
大きさZ_{div}=\frac{Z_1}{Z_2}
位相角θ_{div}=∠(θ_1-θ_2)

 

 

回路例

R回路(抵抗のみ)

抵抗のみの回路のインピーダンス\dot{Z}は、次式で表されます。
\dot{Z}=R=R

上式において、実数項Re=R、虚数項Im=0となります。

インピーダンスの大きさZは、
Z=\sqrt{Re^2+Im^2}=R

インピーダンスの位相角∠θは、
\displaystyle θ=tan^{-1}\frac{Im}{Re}=tan^{-1}\frac{0}{R}=tan^{-1}0=0°

 

R回路(例題)

電圧v=10V、周波数1[kHz]の交流電圧源に、抵抗R=100Ωを接続したとき、交流回路に流れる電流i[A]ついて考えます。

複素インピーダンス\dot{Z}は、
Z=R=100

インピーダンスの大きさZは、
Z=\sqrt{100^2+0^2}=100

インピーダンスの位相角∠θ_Zは、
\displaystyle tanθ_Z=\frac{0}{R}=0
⇔ \displaystyle θ_Z=tan^{-1} 0=0 °

以上より、複素インピーダンス\dot{Z}をフェーザ表示をすると、
\dot{Z}=100∠0°

電流i[A]の大きさは
\displaystyle I=\frac{v}{Z}=\frac{10}{100}=0.1A

電流i[A]の位相は、
\displaystyle ∠θ_i=\frac{∠θ_v}{∠θ_Z}=\frac{∠0°}{∠0°}=∠0°

以上より、電流iの大きさは0.1Aで、電圧vに対して位相が60°遅れていることが導き出せます。

電圧、電流、インピーダンスの大きさと位相をまとめると、左図のようになります。
v=10∠0°
i=0.1∠0°
\dot{Z}=100∠0°

RL回路(直列接続)

RL回路のインピーダンス\dot{Z}は、次式で表されます。
\dot{Z}=R+jωL=R+j2πfL

上式において、実数項Re=R、虚数項Im=ωL=2πfLとなります。

インピーダンスの大きさZは、
Z=\sqrt{Re^2+Im^2}=\sqrt{R^2+(ωL)^2}=\sqrt{R^2+(2πfL)^2}

インピーダンスの位相角∠θは、
\displaystyle θ=tan^{-1}\frac{Im}{Re}=tan^{-1}\frac{ωL}{R}=tan^{-1}\frac{2πfL}{R}

 

RL回路(例題)

電圧v=10V、周波数1[kHz]の交流電圧源に、抵抗R=50Ωと、インダクタンスL=13.8mHのコイルを直列接続したとき、交流回路に流れる電流i[A]ついて考えます。

複素インピーダンス\dot{Z}は、
Z=R+j2πfL=50+j2π×10^3×13.8×10^{-3}
Z≒50+j86.6Ω

インピーダンスの大きさZは、三平方の定理を使い、
Z=\sqrt{50^2+86.6^2}≒100

インピーダンスの位相角∠θ_Zは、
\displaystyle tanθ_Z=\frac{X_L}{R}=\frac{86.6}{50}≒1.732
⇔ \displaystyle θ_Z=tan^{-1} \frac{X_L}{R}=tan^{-1}1.732=60 °

以上より、複素インピーダンス\dot{Z}をフェーザ表示をすると、
\dot{Z}=100∠60°

電流i[A]の大きさは
\displaystyle I=\frac{v}{Z}=\frac{10}{100}=0.1A

電流i[A]の位相は、
\displaystyle ∠θ_i=\frac{∠θ_v}{∠θ_Z}=\frac{∠0°}{∠60°}=∠-60°

以上より、電流iの大きさは0.1Aで、電圧vに対して位相が60°遅れていることが導き出せます。

電圧、電流、インピーダンスの大きさと位相をまとめると、左図のようになります。
v=10∠0°
i=0.1∠-60°
\dot{Z}=100∠60°

 

RC回路(直列接続)

RC回路のインピーダンス\dot{Z}は、次式で表されます。
\displaystyle \dot{Z}=R+\frac{1}{jωC}=R-j\frac{1}{ωC}=R-j\frac{1}{2πfC}

上式において、実数項Re=R
虚数項Im=-\frac{1}{ωC}=-\frac{1}{2πfC}となります。

インピーダンスの大きさZは、
\displaystyle Z=\sqrt{Re^2+Im^2}=\sqrt{R^2+(\frac{1}{ωC})^2}=\sqrt{R^2+(\frac{1}{2πfC})^2}

インピーダンスの位相角∠θは、
⇔ \displaystyle θ=tan^{-1}\frac{Im}{Re}=tan^{-1}\frac{-1}{ωCR}=tan^{-1}\frac{-1}{2πfCR}

RC回路(例題)

電圧v=10V、周波数1[kHz]の交流電圧源に、抵抗R=50Ωと、静電容量C=1.84μFのコンデンサを直列接続したとき、交流回路に流れる電流i[A]ついて考えます。

複素インピーダンス\dot{Z}は、
\displaystyle Z=R+\frac{1}{j2πfC}=R-j\frac{1}{2πfC}
\displaystyle Z=50-j\frac{1}{2π×10^3×1.84×10^{-6}}
\displaystyle Z≒50-j86.6

インピーダンスの大きさZは、三平方の定理を使い、
Z=\sqrt{50^2+86.6^2}=100

インピーダンスの位相角∠θ_Zは、
\displaystyle tanθ=\frac{X_C}{R}=\frac{-86.6}{50}=-1.732
⇔ \displaystyle θ_Z=tan^{-1} \frac{X_C}{R}=tan^{-1}-1.732=-60 °

以上より、複素インピーダンス\dot{Z}をフェーザ表示をすると、
\dot{Z}=100∠-60°

電流i[A]の大きさは
\displaystyle I=\frac{v}{Z}=\frac{10}{100}=0.1A

電流i[A]の位相は、
\displaystyle ∠θ_i=\frac{∠θ_v}{∠θ_Z}=\frac{∠0°}{∠-60°}=∠60°

以上より、電流iの大きさは0.1Aで、電圧vに対して位相が60°進んでいる。

電圧、電流、インピーダンスの大きさと位相をまとめると、左図のようになります。
v=10∠0°
i=0.1∠60°
\dot{Z}=100∠-60°

RLC直列回路

RLC直列回路のインピーダンス\dot{Z}は、次式で表されます。
\displaystyle \dot{Z}=R+jωL+\frac{1}{jωC}

インピーダンスの大きさZと、インピーダンスの位相角∠θは、複素数計算した後、実数項Reと、虚数項Imを次式の通り計算することで算出できます。
Z=\sqrt{Re^2+Im^2}
\displaystyle ∠θ=\tan^{-1}\frac{Im}{Re}

RLC直列回路(例題)

電圧v=25.5V、角周波数ω=1[krad/s]の交流電圧源に、抵抗R=50Ωと、インダクタンス250mHのコイル、静電容量C=2μFのコンデンサを直列接続したとき、交流回路に流れる電流i[A]ついて考えます。

複素インピーダンス\dot{Z}は、
\displaystyle Z=R+jωL+\frac{1}{jωC}=R-j\frac{1-ω^2LC}{ωC}
\displaystyle Z=50-j\frac{1-(10^3)^2×250×10^{-3}×2×10^{-6}}{10^3×2×10^{-6}}
\displaystyle Z≒50-j250

インピーダンスの大きさZは、三平方の定理を使い、
Z=\sqrt{50^2+250^2}=255Ω と求まります。

インピーダンスの位相角∠θ_Zを求めます。
Z≒50-j250から、実数項はRe=50、虚数項はIm=-250となります。
\displaystyle tanθ=\frac{Im}{Re}=\frac{-250}{50}=-5
⇔ \displaystyle θ_Z=tan^{-1} -5≒-78.7°

以上より、複素インピーダンス\dot{Z}をフェーザ表示をすると、
\dot{Z}=255∠-78.7°

電流i[A]の大きさは
\displaystyle I=\frac{v}{Z}=\frac{25.5}{255}=0.1A

電流i[A]の位相は、
\displaystyle ∠θ_i=\frac{∠θ_v}{∠θ_Z}=\frac{∠0°}{∠-78.7°}=∠78.7°

以上より、電流iの大きさは0.1Aで、電圧vに対して位相が78.7°進んでいる。

 

RLC並列回路

RLC並列回路のインピーダンス\dot{Z}は、次式で表されます。
\displaystyle \frac{1}{\dot{Z}}=\frac{1}{R}+\frac{1}{jωL}+\frac{1}{\frac{1}{jωC}}

インピーダンスの大きさZと、インピーダンスの位相角∠θは、複素数計算した後、実数項Reと、虚数項Imを次式の通り計算することで算出できます。
Z=\sqrt{Re^2+Im^2}
\displaystyle ∠θ=\tan^{-1}\frac{Im}{Re}

RLC並列回路(例題)

1Vで角周波数ω[krad/s]が変化する正弦波交流電源を含む回路とし、下図のようなRLC並列接続回路において、ωの値がω=5krad/sのときの電流iについて考えます。

並列接続時のインピーダンスは、並列抵抗の合成抵抗を求める時と同様に、逆数を足し合わせることで求めることが出来ます。

\displaystyle \frac{1}{Z}=\frac{1}{R}+\frac{1}{\frac{1}{jωc}}+\frac{1}{jωL}

⇔ \displaystyle \frac{1}{Z}=\frac{1}{R}+jωC+\frac{1}{jωL}

⇔ \displaystyle \frac{1}{Z}=\frac{1}{R}+j \frac{ω^2LC-1}{ωL}

ω_1=5krad/s=5×10^3rad/sをすると、
R=100kΩ=10^5Ω
ωC=(5×10^3)×(10×10^{-6})=5^{-2}=0.05Ω
ωL=(5×10^3)×(1×10^{-3})=5Ω
 ⇒ω^2LC=0.05×5=0.25

\displaystyle \frac{1}{Z}=\frac{1}{10^5}+j \frac{0.25-1}{5}=10^{-5}-j 0.15

オームの法則から、iを求める。
\displaystyle i=\frac{V}{Z}=\frac{1}{Z}=10^{-5}-j 0.15

電流i[A]の大きさI[A]
I=\sqrt{(10^{-5})^2+0.15^2}≒0.15A

電流i[A]の位相∠θ°を求めます。
i=10^{-5}-j 0.15の計算結果から、実数項はRe=10^{-5}、虚数項はIm=-0.15となります。

\displaystyle tanθ=\frac{Im}{Re}=\frac{-0.15}{10^{-5}}=-15000
⇔ \displaystyle θ=tan^{-1} -15000≒-90 °

以上より、電流iの大きさは0.15Aで、電圧vに対して位相が90°遅れている。

 

虚数単位j

高校数学では虚数単位をiとしますが、電気数学では虚数単位をjとします。
これは、ローマ字のiは、電気工学では電流iとして使用することが多く、混同しやすいため、それを避けるためにjを使用します。

虚数単位は次式で表されます。
j=\sqrt{-1}
j^2=-1

 

 

関連記事(交流回路に関する解説)

  

 

参考書

イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。

問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。

本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。

 

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