Loading [MathJax]/extensions/MathEvents.js

コルピッツ発振器

コルピッツ発振器 理論

コルピッツ発振器とは

コルピッツ発振器は、トランジスタ、2個のコンデンサ、コイルで作れる発振回路です。

発振とは、電気に限らず、特定の周波数で持続的に振動を発生させることです。特に、外部からの入力が無くても、振動が継続することが重要です。

発振回路は、増幅回路を正帰還することで発振させます。そのことにより、特定の正弦波等の電気的振動を出力する回路です。
コルピッツ発振回路は、高い周波数で発振させることができるため、ラジオの受信機等に使用されます。

  

発振条件

ループ利得AHが次の2つの条件を満たすことが発振条件です。
振幅条件:Re(AH)>1
周波数条件:Im(AH)=0

 

振幅条件について

次のような、オペアンプの正帰還回路を考えます。

Aはオペアンプの電圧利得で、Hは帰還率です。

出力v_oが帰還率H倍した後、オペアンプでA倍されて帰ってくると、v_oAH倍されます。
このAHは帰還回路を一巡したときの利得であり、ループ利得と呼びます。

ループ利得AH=1のとき、出力電圧v_0が帰還して増幅された結果が1倍となるので、減衰も、増幅もしません。
ループ利得AH>1のとき、出力電圧v_0が帰還して増幅された結果が1倍よりも大きくなるので、増幅していきます。

出力電圧v_oは、飽和するまで増幅するため、AH≧1のときに発振します。

 

周波数条件について

Im(AH)は、ループ利得AHの虚数部分です。
ループ利得AHの虚数部分が0でないとき、つまり、Im(AH≠0)のときは、ループする信号の位相が位相差角分ずれていきます。
その結果、ループ信号は反転し、減衰させる方向に働いてしまうため、Im(AH≠0)のときは発振することが出来ません。
そのため、Im(AH=0)が発振条件となります。

 

コルピッツ発振器の回路解析

(1)簡易小信号等価回路に書変え

回路解析をするために、トランジスタを簡易小信号等価回路に書き変えます。

回路中の各パラメータの意味は、次の通りです。

v_i:入力電圧
v_o:出力電圧
i_i:入力電流

h_i:入力インピーダンス
h_f:電流増幅率
h_o:出力アドミタンス

C_1:コンデンサ
C_2:コンデンサ
L:リアクトル

 

(2)ループ利得の式を求める

入力電圧v_iと、入力電流i_iの関係は、
i_i=\frac{v_i}{h_i} …①

電流源から右側をみたアドミタンスY_cは、
Y_c=\frac{1}{h_o}+jωC_1+\frac{1}{jωL+\frac{1}{jωC_2}} …②

電流源から右側をみたインピーダンスZ_cは、
Z_c=\frac{1}{Y_c} …③

コレクタの電圧v_cは、
\displaystyle v_c=-h_fi_iZ_c=\frac{-h_fi_i}{\frac{1}{h_o}+jωC_1+\frac{1}{jωL+\frac{1}{jωC_2}}} …④

出力電圧v_oは、分圧則から、
\begin{eqnarray} v_o&=&\frac{\frac{1}{jωC_2}}{jωL+\frac{1}{jωC_2}}v_c \\ &=&\frac{\frac{1}{jωC_2}}{jωL+\frac{1}{jωC_2}}\frac{-h_f\frac{v_i}{h_i}}{\frac{1}{h_o}+jωC_1+\frac{1}{jωL+\frac{1}{jωC_2}}} …⑤ \end{eqnarray}

したがって、ループ利得AHは、次のように求まります。
\displaystyle AH=\frac{v_o}{v_i}=\frac{\frac{1}{ωC_2}}{ωL-\frac{1}{ωC_2}}\frac{\frac{h_f}{h_i}}{\frac{1}{h_o}+jωC_1+\frac{1}{jωL+\frac{1}{jωC_2}}} …⑥

 

(3)周波数条件:Im(AH)=0

⑥式の虚数項のみを取り出して展開していきます。

\displaystyle \begin{eqnarray} Im(AH)&=&Im \left(\frac{v_o}{v_i} \right)=0 \\ \\ &⇔& jωC_1+\frac{1}{jωL+\frac{1}{jωC_2}}=0 \\ \\ &⇔& \frac{C_1}{C_2}+\frac{1}{1-ω^2LC_2}=0 \\ \\ &⇔& ω^2LC_1=1+\frac{C_1}{C_2} \\ \\ &⇔& ω^2=\frac{C_1+C_2}{LC_1C_2} \\ \\ &⇔& ω=\sqrt{\frac{C_1+C_2}{LC_1C_2}} …⑦ \end{eqnarray}

以上より、発振する角周波数 ω を求めることができました。

 

(4)振幅条件:Re(AH)≧1

⑥式の実数項のみを取り出して展開していきます。

\displaystyle Re(AH)=Re \left(\frac{v_o}{v_i} \right)=\frac{\frac{1}{ωC_2}}{ωL-\frac{1}{ωC_2}}\frac{\frac{h_f}{h_i}}{\frac{1}{h_o}}≧1

⇔ \displaystyle \frac{1}{ω^2LC_2-1}\frac{h_oh_f}{h_i}≧1 …⑧

周波数条件で求めた⑦式の ω を代入し、式の整理をするため部分的な計算をします。
\displaystyle ω^2LC_2-1=\frac{C_1+C_2}{LC_1C_2}LC_2-1=\frac{C_2}{C_1} …⑨

⑧式に⑨式を代入すると、次のように振幅条件が求まります。
\displaystyle \frac{C_1}{C_2}\frac{h_oh_f}{h_i}≧1

 

(5)回路解析の結果まとめ

回路解析した結果、周波数条件、振幅条件を求めることが出来ました。

周波数条件
\displaystyle ω=2πf=\sqrt{\frac{C_1+C_2}{LC_1C_2}}

⇔ \displaystyle f=\frac{1}{2π}\sqrt{\frac{C_1+C_2}{LC_1C_2}}

振幅条件
\displaystyle \frac{C_1}{C_2}\frac{h_oh_f}{h_i}≧1

 

 

関連記事

ネガティブフィードバック

  

参考書

イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。

問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。

本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました