概要
オペアンプを使った負帰還増幅回路に代表されるようなフィードバック制御のシステムを評価するためには、ゲイン線図、位相線図、ボード線図が便利です。
本頁では、この3つの図について解説します。
ゲイン線図

ゲイン線図は、横軸を対数軸の周波数[Hz]、縦軸をゲイン[dB]としてグラフにプロットした図です。
通過域
安定したゲインA[dB]を得られる周波数帯域です。
遮断周波数f_c[Hz]までの、安定したゲインが得られる周波数の範囲を帯域幅と呼びます。
遷移域
遷移域では、周波数が大きくなると、出力電圧の振幅は小さくなります。
利得の減衰の傾きを減衰傾度と呼びます。
上図の例は、-20[dB/dec]の減衰傾度のシステムです。
この-20[dB/dec]とは、周波数が10倍(decade)大きくなると、ゲインは20dB低くなることを表します。
-20dBは、出力電圧の振幅が\frac{1}{10}倍に小さくなることを表しています。
遮断周波数
遮断周波数は、通過域から遷移域への変化点となる周波数です。
通過域から遷移域への変化点は、明確にここで変わるというポイントは無く、連続的に変化します。
どこに変化点をするべきかが検討された結果、通過域のゲインA[dB]から、3[dB]減衰したときに遮断周波数とすると決められました。
何故、このように定められているかというと、通過域の出力電力から、半分大きさの電力となる周波数として決められたからです。
通過域の出力電力P_P、遮断周波数の出力電力P_cとしたとき、電力利得G_P[dB]は、
G_P=10log\frac{P_c}{P_P}=10log\frac{1}{2}≒-10*0.3=-3dB
電圧利得G_vも同じく3[dB]なので、
G_v=20log\frac{V_c}{V_P}=-3dB
⇔ log\frac{V_c}{V_P}=-0.15
⇔ \frac{V_c}{V_P}=10^{-0.15}≒1.41=\frac{1}{\sqrt{2}}
となり、遮断周波数の時の電圧振幅V_cは、通過域の時の電圧振幅V_Pの\frac{1}{\sqrt{2}}倍の大きさになります。
0[dB]以下のゲイン
入力信号の周波数が高くなることで、出力信号のゲインが減衰していき、入力信号V_{in}、出力信号V_{out}の大きさが等しくなったときを考えます。(V_{out}=V_{in})
この時、
G_v=20log\frac{V_{out}}{V_{in}}=20log1=0[dB]
となり、0[dB]となります。
周波数がさらに高くなり、出力信号のゲインが減衰するとV_{in}>V_{out}となります。
このとき、ゲインG_vはマイナスの値となります。
もし、ゲインG_vが-20[dB]とすると、V_{out}は、V_{in}の\frac{1}{10}倍の大きさとなります。
G_v=20log\frac{V_{out}}{V_{in}}=20log\frac{1}{10}
=20log1-20log10=0-20=-20[dB]
位相線図

位相線図は、横軸を対数軸の周波数[Hz]、縦軸を位相角度[°]としてグラフにプロットした図です。
ボード線図
ボード線図は、フィードバック制御のシステムの安定性について判別することに役立ちます。
不安定になると、出力信号が発振してしまい、本来出力すべき信号が出力されなくなってしまいます。そのため、フィードバック制御システムが安定か不安定かを判別しなければなりません。

ボード線図は、ゲイン線図と位相線図を組み合わせたものです。
2つの図を組み合わせることで、フィードバック回路を組んだ時に、そのフィードバック回路が安定動作可能かを判別することができます。
位相交差周波数
位相が-180°の信号は+はーに、—は+に反転します。
反転した出力信号が入力にフィードバックされると、負帰還だったシステムが正帰還となってしまいます。そのため、位相線における-180°は、負帰還システムにおいて非常に重要なことから位相交点と呼びます。
位相が-180°になるときの周波数を位相交差周波数と呼びます。
ゲイン交差周波数
ゲインが0dBの時、0dBは、出力信号が入力信号と同じ大きさ(1倍)の時を表します。
ゲインが0dBより低くなり、マイナスであれば信号は減衰します。
つまり、0dBは信号の増幅と、減衰の切り替わる点であり重要なことからゲイン交差点と呼びます。
ゲインが0dBになるときの周波数をゲイン交差周波数と呼びます。
安定性判別
安定性について述べるため、不安定な状態とは何かについて考えます。
負帰還システムにおいて、位相が-180°で反転した信号が、0dB以上に増幅されて帰還されたとき、正帰還システムとなります。
正帰還システムは、発振するシステムであるため、動作が不安定となります。
全ての周波数において、正帰還とならない状態が安定と言えます。このことから、安定性について次の2つを考える必要があります。
①位相余裕
ゲイン交差周波数の時、位相が-180°に対してどれくらい余裕があるか。
【例】ゲイン交差周波数の時、出力信号の位相が-120°とすると、
位相余裕は-120°-180°=60°です。
②ゲイン余裕
位相交差周波数の時、ゲインが0dBよりもどれくらい余裕があるか。
【例】位相交差周波数の時、出力信号のゲインが-40dBとすると、
ゲイン余裕は0dB-(-40dB)=40dBです。
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