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オペアンプ(性能指標)

オペアンプ 理論

オペアンプとは

オペアンプ(Operational Amplifire)とは、演算増幅器とも呼ばれます。
オペアンプは、反転入力のV_{in-}、非反転入力V_{in+}の2つの入力端子に入力された電圧差を増幅して、出力端子に出力します。

オペアンプの周りに、抵抗やコンデンサ等の素子を接続して簡単な回路を構成することで、加算回路、積分回路等の演算をする回路が作れるだけでなく、バッファ回路、フィルター回路、三角波等の各種信号生成回路 等々、様々な応用が利くため、オペアンプは非常に重要な回路です。

 

 

オペアンプの性能指標

オペアンプの性能指標は多々ありますが、電験3種の試験では次の4項目が問われることが多いです。

電験三種で問われるオペアンプの主要特性記号[単位]理想的特性
利得(ゲイン)G_v[dB]∞[dB]
遮断周波数(カットオフ周波数)f_c[Hz]∞[Hz]
入力インピーダンスZ_{in}[Ω]∞[Ω]
出力インピーダンスZ_{out}[Ω]0[Ω]

 

利得(増幅度、ゲイン):G_v

利得とは、入力信号が何倍の大きさの信号となって出力されるかを表します。利得には、電圧利得、電流利得、電力利得の3種類が主にあります。

増幅度と呼ぶときは、何[倍]になったかを表します。
利得や、ゲインと呼ぶときは、何[dB]になったかを表します。

 

利得(増幅度、ゲイン)の表現方法(単位)

増幅度と呼ぶときは、何[倍]になったかを表します。
利得(ゲイン)と呼ぶときは、何[dB]になったかを表します。

デシベル[dB]とは
ベル[B]という単位に、1/10の意味があるデシ[d]が付いた単位で、デシベル[dB]です。ベル[B]という単位は、倍数を「10の何乗か?」で表すための単位です。
電力利得をベルで表すと
Gp[B]=log\frac{P_o}{P_i}

と表されます。ベル[B]だと、数字が小さくて取扱いづらいので、デシ[d]をつけて
Gp[dB]=10log\frac{P_o}{P_i}
という形で扱います。

電圧利得
入力電圧をV_i、出力電圧をV_oとしたとき、
電圧増幅度Av[倍]は、次式で表されます。
\displaystyle Av=\frac{V_o}{V_i}

電圧利得(電圧ゲイン)Gv[dB]は、次式で表されます。
\displaystyle Gv=20log_{10}Av

電流利得
入力電流をI_i、出力電流をI_oとしたとき、
電流増幅度Ai[倍]は、次式で表されます。
\displaystyle Ai=\frac{I_o}{I_i}

電流利得(電流ゲイン)Gi[dB]は、次式で表されます。
\displaystyle Gi=20log_{10}Ai

電力利得
入力電力をP_i、出力電流をP_oとしたとき、
電力増幅度Ap[倍]は、次式で表されます。
\displaystyle Ap=\frac{P_o}{P_i}

電力利得(電力ゲイン)Gp[dB]は、次式で表されます。
\displaystyle Gp=10log_{10}Ap

電力利得Gp[dB]10logであるのに対し、
電圧利得、電流利得Gv[dB]Gi[dB]が何故20logなのか?

それは、電力の式がP=I^2R=\frac{V^2}{R}であるからです。
電力利得の係数10logから、次のように展開できます。
\displaystyle Gp=10log_{10}Ap
⇔ \displaystyle =10log_{10}\frac{P_o}{P_i}

⇔ \displaystyle =10log_{10}\frac{\frac{V_o^2}{R}}{\frac{V_i^2}{R}}

⇔ \displaystyle =10log_{10} \left( \frac{V_o}{V_i} \right)^2

⇔ \displaystyle =20log_{10} \left( \frac{V_o}{V_i} \right)

⇔ \displaystyle =Gv

電流利得Giも同様に展開できることから、
電力利得Gpの係数は10であるのに対し、電圧利得、電流利得Gv[dB]Gi[dB]20であることがわかりました。

 

 

周波数特性

オペアンプの周波数特性は、左図のような
周波数f[Hz]-ゲインG_v[dB]のグラフを描いて示します。

このグラフは、ゲイン線図と呼び、横軸の周波数は対数軸、縦軸のゲインはデシベル[dB]でプロットされます。

遮断周波数(カットオフ周波数)
オペアンプが増幅できる信号の周波数には限界があります。
入力信号の周波数が低い場合は、オペアンプのゲインG_v[dB]の信号増幅ができますが、周波数が高くなってくると、ゲインが次第に下がっていきます。

ゲインが下がり始める周波数を遮断周波数(カットオフ周波数)と呼びます。
遮断周波数f_cは、オペアンプのゲインG_v[dB]に対して、3[dB]小さくなった時の周波数です。

信号の減衰特性
信号周波数が遮断周波数f_cを超えると、-20[dB/dec]の特性で減衰していきます。
-20[dB/dec]とは、周波数が10倍になると20dB減衰するということを表しています。

 

 

入力インピーダンス:Z_{in}

入力インピーダンスZ_{in}とは、反転入力のV_{in-}、非反転入力V_{in+}の2つの入力端子の間のインピーダンスです。

オペアンプの理想的な入力インピーダンスはZ_{in}=∞です。

入力インピーダンスZ_{in}が高い方が良い理由

オペアンプの入力端子には、センサー等の前段の信号源が接続されます。

前段の信号源にも出力インピーダンスがありますので、接続後の回路は、信号源の出力インピーダンスと、オペアンプの入力インピーダンスの直列接続となります。
オペアンプの入力端子間電圧が入力信号なので、左図のZ_{in}にかかる電圧信号V_{in}が入力信号となります。

仮にオペアンプの入力インピーダンスZ_{in}が小さく、信号源の出力インピーダンスZ_{out}と同じだったとします。(Z_{in}=Z_{out}
オペアンプの入力信号V_{in}は、信号源の電圧信号の大きさがE[V]から分圧されるので、
V_{in}=\frac{Z_{in}}{Z_{in}+Z_{out}}E=\frac{1}{2}E
となり、半分の大きさとなってしまいます。

オペアンプの入力インピーダンスがZ_{in}=∞で理想的な特性だったとします。
この時、オペアンプの入力信号V_{in}は、信号源の電圧信号の大きさがE[V]から分圧されても、信号源の電圧信号と等しくなります。
V_{in}=E

以上のことから、オペアンプの入力インピーダンスZ_{in}が高いと、前段からの伝達ロスが少なくなって効果的に信号が伝達できるため、良いことがわかりました。

 

 

 

出力インピーダンス:Z_{out}

出力インピーダンスZ_{out}は、オペアンプの出力信号につながる内部抵抗です。

オペアンプの理想的な出力インピーダンスはZ_{out}=0です。

出力インピーダンスZ_{out}が低い方が良い理由

オペアンプの出力端子には、様々な負荷が接続されます。

オペアンプの出力に負荷をつなげると、出力インピーダンスZ_{out}と、負荷のインピーダンスZ_{load}は直列接続となります。

そのため、負荷に入力される電圧信号V_{load}は分圧されて
\displaystyle V_{load}=\frac{Z_{load}}{Z_{load}+Z_{out}}V_{out}

となります。

接続される負荷がスピーカー( Z_{load}=2~8Ω 程度)のように低インピーダンスの負荷の場合、オペアンプの出力インピーダンスZ_{out}が大きいと、動かすことができません。

仮にオペアンプの出力インピーダンスZ_{out}が大きく、Z_{out}=8kΩとします。
スピーカーのインピーダンスが Z_{load}=8Ωとすると、負荷に入力される電圧信号は、
\displaystyle V_{load}=\frac{Z_{load}}{Z_{load}+Z_{out}}V_{out}=\frac{8}{8+8000}V_{out}=0.001V_{out}
となり、ほとんど入力できません。

オペアンプの出力インピーダンスがZ_{out}=0で理想的な特性だったとします。
この時、負荷の入力信号V_{load}は、オペアンプの出力信号V_{out}[V]と等しくなります。
V_{load}=V_{out}

以上のことから、オペアンプの出力インピーダンスZ_{out}が低いと、後段への伝達ロスが少なくなって効果的に信号が伝達できるため、良いことがわかりました。

 

オペアンプのその他の性能指標

電験では問われることはほとんどないと思われますが、電子回路を設計する上では様々な性能指標が多々あります。その一部を紹介します。気が向いたら項目増やすかもしれません。

電源特性概要
電源電圧オペアンプに供給する電源電圧
電源電圧除去比(SVR)電源電圧の変動により入力オフセット電圧が変動することで、出力が変化します。SVRは電源電圧の変動量と入力オフセット電圧の変動量の比です。
電源のリップルや、電源ラインに乗ってくるノイズに対して、どの程度影響を抑えられるかを示す指標です。
消費電流オペアンプに供給する電流量です。消費電流が大きいと消費電力が大きくなるため、小さい方が良いです。
入力特性概要
入力オフセット電圧V_{in+}V_{in-}の二つの入力端子に同じ電圧を入力したとき、理想的なオペアンプでは出力電圧は出力されません。
しかし、実際のオペアンプでは、V_{in+}V_{in-}間に入力オフセット電圧分の電位差があるため、出力電圧が出力されてしまいます。
この出力電圧を0Vにするために必要な入力端子間の電位差を入力オフセット電圧と呼びます。
同相入力電圧範囲オペアンプに入力できる電圧の範囲です。
オペアンプに負帰還をかけたときに、V_{in+}・V_{in-}の二つの端子間はイマジナリーショートとして扱うことから、同相が入力されていると考えることができます。
同相入力電圧範囲を超えた入力がされると、出力が飽和して正常な出力ができなくなります。(反転する)
同相信号除去比(CMRR)CMRRはCommon Mode Rejection Ratioの意味です。
コモンモードノイズの影響を除去できる割合を表し、差動利得A_{diff}[dB]、同相利得A_{cm}[dB]としたとき、CMRRは次式で表されます。
\displaystyle CMRR=A_{diff}[dB]-A_{cm}[dB]

コモンモードノイズとは、発生原因はいくつかありますが、一例として、ケーブル内配線等に電磁誘導で入ってきたノイズが、浮遊容量等を通して電源ライン・GNDに戻っていく際に発生します。
電源・GNDで流れるノイズの電流の向きが同相であるため、コモンモード(Common mode)と呼ばれます。
コモンモードノイズは対策が難しいノイズなので、微小信号を扱う回路においてはCMRRは重要な性能です。
AC特性概要
スルーレートステップ入力したときに、1μsecあたりにオペアンプの出力電圧が何Vまで変化できるかを示す性能です。
振幅の大きな信号を取り扱う回路や、コンパレータのように0V~電源電圧を行き来するような回路の場合は、スルーレートが低いと動作が遅れてしまいます。
セトリングタイムステップ入力したときに、出力が最終値を中心とする規定誤差の範囲内に到達して、留まるまでに要する時間のことです。
全高調波歪率(THD)全高調波歪率は、Total Harmonic DistortionからTHDと呼ばれます。
周波数f_B[Hz]の基本波を入力したとき、出力にはf_Bの周波数の信号の他にも、基本波のN倍の周波数の信号が含まれます。
高調波が発生する原因は、オペアンプの入力信号と出力信号には非線形性があるためです。
2f_B[Hz]の周波数の高調波は2次高調波
3f_B[Hz]の周波数の高調波は3次高調波


Nf_B[Hz]の周波数の高調波はN次高調波と呼ばれます。

\displaystyle THD=\frac{出力信号に含まれる全高調波の実効値の合計}{基本波実効値} × 100[%]

 

 

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参考書

イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。

問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。

本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。

 

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