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【電験三種:理論】令和1年度 問13

電験三種令和1年度理論問13 令和1年度

概要

負帰還増幅回路の特徴に関する論説問題です。
正解の選択肢は基礎レベルの事を問われているため、問題としては簡単です。
しかし、全ての選択肢について理解した上で回答するとなると、負帰還について深い知識を問われます。

キーワード
負帰還増幅回路、電圧増幅度、帰還率、利得(ゲイン)、帯域幅

 

問題

図のように電圧増幅度A_v(>0)の増幅回路と帰還率β(0<β≦1の帰還回路からなる負帰還増幅回路がある。

この負帰還増幅回路に関する記述として、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

ただし、帰還率βは周波数によらず一定であるものとする。
(1)負帰還増幅回路の帯域幅は、負帰還をかけない増幅回路の帯域幅よりも狭くなる。
(2)電源電圧の変動に対して負帰還増幅回路の利得は、負帰還をかけない増幅回路よりも不安定である。
(3)負帰還をかけることによって、増幅回路の内部で発生するひずみや雑音が増加する。
(4)負帰還をかけない増幅回路の電圧増幅度A_vと帰還回路の帰還率βの積が1より十分小さいとき、負帰還増幅回路全体の電圧増幅度は帰還率βの逆数で近似できる。
(5)負帰還増幅回路全体の利得は、負帰還をかけない増幅回路の利得よりも低下する。

 

 

答え

(5)

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回答解説

(1)【誤り】
負帰還増幅回路の帯域幅は、負帰還をかけない増幅回路の帯域幅よりも狭くなる

ゲインと帯域幅がわかりやすいように、ボード線図を示します。
負帰還増幅回路は閉ループゲインA_{vc}となり、開ループゲインA_{vo}より小さくなりますが、帯域幅は、帯域幅(閉ループ)に示す通り広がります。

(2)【誤り】
電源電圧の変動に対して負帰還増幅回路の利得は、負帰還をかけない増幅回路よりも不安定である

電源電圧変動除去比(PSRR)の問題です。
PSRRは、電源電圧の変動に対するゲインと差動入力時の電圧ゲインの比として決められています。

PSRRは、負帰還では良くも悪くもならないです。
しかし、負帰還をすることによって回路のゲインが、開ループゲインA_{vo}[dB]から、閉ループゲインA_{vc}[dB]に小さくなるため、その結果として電源電圧変動は小さくなります。
そのため、負帰還をかけない増幅回路よりも安定となります。

 


(3)【誤り】
負帰還をかけることによって、増幅回路の内部で発生するひずみや雑音が増加する
  

入力信号はX、出力信号はY、雑音はNとしたとき、出力信号の伝達関数を求めます。

E=X-βY …①
Y=AE+N=A(X-βY)+N …②

②式に①式を代入して整理します。
(1+Aβ)Y=AX+N
\displaystyle Y=\frac{A}{1+Aβ}X+\frac{1}{1+Aβ}N …③

③式から、理想オペアンプのゲインA=∞[dB]とすると、
雑音を表す項は、
\displaystyle \frac{1}{1+Aβ}N≒0
となり、ほぼ0となります。

したがって、負帰還をかけることによって、増幅回路の内部で発生するひずみや雑音が減少します。

 


(4)【誤り】
負帰還をかけない増幅回路の電圧増幅度A_vと帰還回路の帰還率βの積が1より十分小さいとき、負帰還増幅回路全体の電圧増幅度は帰還率βの逆数で近似できる。

負帰還の伝達関数を求めます。
出力信号を帰還回路を通して入力に戻したときの信号は、βYです。

入力信号Xから、βYを引いたものがEなので、
E=X-βY

Eを増幅回路A_vに通すと出力信号Yとなるので、Yの式は次のように表されます。
Y=A_vE=A_v(X-βY)
\displaystyle (1+A_vβ)Y=A_vX

\displaystyle Y=\frac{A_v}{1+A_vβ}X …①

となります。

(4)の文章から、A_vβ<<1とした時を考えます。①式に代入すると、
\displaystyle Y=\frac{A_v}{1+A_vβ}X≒\frac{A_v}{1+0}X=A_vX …②

となるので、負帰還増幅回路全体の電圧増幅度はA_vとなります。

 


(5)【正しい】負帰還増幅回路全体の利得は、負帰還をかけない増幅回路の利得よりも低下する

ボード線図から、
負帰還増幅回路は閉ループゲインA_{vc}となり、開ループゲインA_{vo}より小さくなります。

 

 

 

出典元

一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和1年度 第三種電気主任技術者試験 理論科目A問題問13

参考書

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本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
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ある程度学んで基礎がある人に向いています。

 

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