概要
テブナンの定理とRC回路の過渡応答が複合された問題です。
複合問題なため、ぱっと見難しそうですが、テブナンの定理の問題としても、RCの過渡応答の問題としても、個々の難易度は初歩的です。
キーワード
RC回路、過渡応答、時定数、定常状態、テブナンの定理
問題
図の回路のスイッチを閉じたあとの電圧v(t)の波形を考える。
破線から左側にテブナンの定理を適用することで、回路の時定数[s]とv(t)の最終値[V]の組合せとして、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、初めスイッチは開いており、回路は定常状態にあったとする。

時定数[s] | 最終値[V] | |
(1) | 0.75 | 10 |
(2) | 0.75 | 2.5 |
(3) | 4 | 2.5 |
(4) | 1 | 10 |
(5) | 1 | 0 |
答え
(2)
解説テキスト リンク
回答解説
回答の流れ
(a)問題の解答を行う
①テブナンの定理を使って回路を書き直す
②RC回路のv(t)について微分方程式を立てる
③過渡状態を解析して時定数を導出する
④定常状態を解析する
————–ここまでで回答可能————–
【蛇足】v(t)の過渡応答の式を導出する
⑤初期状態を解析する
⑥v(t)の一般解を求める

(a)問題の解答を行う
①テブナンの定理を使って回路を書き直す

破線から左側を見た抵抗R_{ab}を求めます。
\frac{1}{R_{ab}}=\frac{1}{3}+\frac{1}{1}
⇔R_{ab}=\frac{3}{4}=0.75Ω

破線の端子電圧V_{ab}を求めます。
V_{ab}=\frac{1}{1+3}10=2.5V

テブナン等価回路に書き直すと左図のようになります。
②RC回路のv(t)について微分方程式を立てる

回路中を流れる電流をi[A]とします。
電流の定義式から、次の電流と電荷の関係式が出せます。
i=\frac{dq}{dt}
コンデンサの電荷、静電容量、電圧の関係式から
q=Cv(t)
電流と電荷の関係式に代入すると、
i=C \frac{dv(t)}{dt}
回路の方程式は、次式となります。
V_{ab}=R_{ab}i+v(t)
⇔ V_{ab}=CR_{ab}\frac{dv(t)}{dt}+v(t)
③過渡状態を解析して時定数を導出する
コンデンサ電圧の過渡解をv_t(t)とします。
v_t(t)=ke^{-st}
としたとき、
\frac{dv_t(t)}{dt}=-ske^{-st}
過渡解を求める方程式は、
0=ke^{-st}-CR_{ab}ske^{-st}=(1-CR_{ab}s)ke^{-st}
上式が成り立つ条件は、
s=\frac{1}{CR_{ab}}
です。
時定数τは、過渡解の式がe^{-1}となるときの時間であるため、
sτ=1
⇔ τ=\frac{1}{s}=CR_{ab}=1・0.75=0.75[s]
したがって、時定数τ=0.75sと求まりました。
④定常状態を解析する
コンデンサは、テブナン等価回路の電源電圧V_{ab}=2.5Vまで充電されます。
コンデンサ電圧の最終値である定常解は、t=∞秒立った時の電圧として考えられるので、v_s(∞)=2.5Vと表せます。
以上より、
(2)時定数τ[s]=0.75、最終値v(∞)=2.5と求まりました。
【蛇足】v(t)の過渡応答の式を導出する
既に問いに対する解は求まりましたが、一般解を求めたらどのような式になるかを示します。
⑤初期状態を解析する
コンデンサの初期電圧は、v(0)=0Vです。
したがって、
v(0)=v_t(0)+v_s(∞)=ke^0+2.5=k+2.5=0
⇔ k=-2.5
よって、過渡解v_t(t)が、次のように求まります。
\displaystyle v_t(t)=-2.5e^{-\frac{1}{0.75}t}
⑥v(t)の一般解を求める
\displaystyle v(t)=v_t(t)+v_s(∞)=-2.5e^{-\frac{1}{0.75}t}+2.5=2.5(1-e^{-\frac{1}{0.75}t})

出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和2年度 第三種電気主任技術者試験 理論科目A問題問10
参考書
イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。
問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。
コメント