概要
点電荷が作り出す電界中の2点間の電位差について求める問題です。
電位に関する式を理解していれば容易に回答できます。
キーワード
電位、電位差
問題
図のように、真空中に点P、点A、点Bが直線状に配置されている。
点PはQ[C]の点電荷を置いた点とし、A-B間に生じる電位差の絶対値を|V_{AB}|[V]とする。
次の(a)~(d)の四つの実験を個別に行ったとき、|V_{AB}|[V]の値が最小となるものと最大になるものの実験の組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
[実験内容]
(a)P-A間の距離を2m、A-B間の距離を1mとした。
(b)P-A間の距離を1m、A-B間の距離を2mとした。
(c)P-A間の距離を0.5m、A-B間の距離を1mとした。
(d)P-A間の距離を1m、A-B間の距離を0.5mとした。

(1)(a)と(b) (2)(a)と(c) (3)(a)と(d)
(4)(b)と(c) (5)(c)と(d)
答え
(2)
要点整理
電位V[V]
点電荷Q[C]が作り出す電界E[V/m]の場における電位V[V]は、誘電率ε[F/m]、距離r[m]を使用して次式で表されます。
\displaystyle V=\frac{Q}{4πεr}
電位の式を導出します。


点電荷Q[C]から、N本の電気力線が放射状に出ます。
電気力線の本数N[本]は、次の①式で表されます。
\displaystyle N=\frac{Q}{ε}[本] ………①
電界強度E[V/m]は、電気力線の本数の密度と等しいです。そのため、点電荷Q[C]から距離r[m]の点の球の表面積をS[m^2]とすると、電界強度は次式で表されます。
\displaystyle E=\frac{N}{S}[V/m] ………②
半径r[m]の球の表面積S[m^2]は、
S=4πr^2[m^2] ………③
①・③式を②式に代入すると、
\displaystyle E=\frac{Q}{4πεr^2}[V/m] ………④

電界強度E[V/m]は、電位V[V]傾きです。これを式に表すと、
\displaystyle E=-\frac{dV}{dr} ………⑤
※電位Vは電界から受けるクーロン力に逆らって電荷が動いた時に大きくなるので、マイナスが付きます。
⑤式の両辺を距離rに対して積分すると、電位Vの式となります。
V=-\int_{基点}^{対象点}E dr ………⑥
※基点が定義されていないとき、つまり、単純に電位V[V]を求めるようなときは、
無限遠点:\infty を基点とします。
⑥式に④を代入して積分します。
この時、基点を無限遠点(\infty)、対象点をr[m]離れた点とします。
\displaystyle \begin{eqnarray} V&=&-\int_{基点}^{対象点}E dr = -\int_{\infty}^{r} \frac{Q}{4πεr^2} dr &=&\frac{Q}{4πε} \left[ r \right]_{\infty}^{r} = \frac{Q}{4πεr} \end{eqnarray}
以上より、\displaystyle V=\frac{Q}{4πεr} が導出出来ました。
補足
基点を無限遠点\inftyとしなかった場合の電位差V_{AB}を求めてみます。
Q[C]の電荷からの距離がr_B[m]である点B(基点)から、距離r_A[m]である点A(対象点)までの電位差をV_{AB}[V]としたとき、次の通り計算できます。

\displaystyle \begin{eqnarray} V_{AB}&=& -\int_{r_B}^{r_A} \frac{Q}{4πεr^2} dr = \frac{Q}{4πε} \left[ \frac{1}{r} \right]_{r_B}^{r_A} \\ &=&\frac{Q}{4πεr_A}-\frac{Q}{4πεr_B} = V_A-V_B \end{eqnarray}
回答解説
Q[C]の電荷からr[m]離れた点の電位の式は、次式で表されます。
\displaystyle V=\frac{Q}{4πε_0r} ………①
この①式に、距離を代入することで、(a)~(d)の各条件における点A、点Bの電位V_A[V]、V_B[V]と、点Aと点Bの電位差の絶対値|V_{AB}|[V]を求めます。
なお、|V_{AB}|=|V_A-V_B|です。
点Aの電位 V_A[V] | 点Bの電位 V_B[V] | 点Aと点Bの電位差 |V_{AB}|[V] | |
(a) | \displaystyle \frac{Q}{8πε_0} | \displaystyle \frac{Q}{12πε_0} | \displaystyle \frac{Q}{24πε_0} |
(b) | \displaystyle \frac{Q}{4πε_0} | \displaystyle \frac{Q}{12πε_0} | \displaystyle \frac{Q}{6πε_0} |
(c) | \displaystyle \frac{Q}{2πε_0} | \displaystyle \frac{Q}{6πε_0} | \displaystyle \frac{Q}{3πε_0} |
(d) | \displaystyle \frac{Q}{4πε_0} | \displaystyle \frac{Q}{6πε_0} | \displaystyle \frac{Q}{12πε_0} |
上の表より、|V_{AB}|[V]の値が最小になるものは(a)、最大になるものは(c)であることがわかります。
以上より、答えは (2) です。
出典元
令和元年度第三種電気主任技術者試験 理論科目A問題問1
参考書
イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。
問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
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ある程度学んで基礎がある人に向いています。
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