断路器とは
断路器は、英語で書くと、Disconnect Switchなので、ディスコンと呼ばれます。
使用目的は、作業者の安全の確保をするために、電気を断路することです。
年次点検や、受変電設備の修繕・工事をするときには、高圧・特別高圧が充電されているキュービクル内に、多くの作業者が立ち入ります。
そんな時に、万が一にでも電気が送られてしまうと、命に関わる重大な事故を引き起こします。
そのような事が無いように、確実に、安全を確保するために断路器を使って電路を切り離すために使用されます。
この装置を操作する際は、負荷電流が流れていてはいけない等の様々な前提条件があるので、断路器について正しく理解し、安全の確保に努めましょう。
断路器の記号
断路器の記号に関しては、「JIS C 0617 電気用図記号」で定められています。
断路器の記号は左図の通りです。
単線結線図に実際に書くときは、JIS C 0617の記号の内容を完全に記憶している人は少ないので、一目で見てわかるように記号横にDSと文字を添える事が多いです。
断路器の記号には、3つの機能が含まれています。
①開閉器一般
②断路機能
③手動操作
これらを組み合わせて、断路器の記号になります。
使い方
基本的に真空遮断器などの高圧遮断器の直近上位に設置され、年次点検等の場内停電を行う際に、遮断器を開放した後、断路器を開放することで作業中の安全の確保を行います。
ちなみに断路器の開閉操作は操作用フック棒(通称ディスコン棒)と呼ばれる棒を、本体のフック穴に引っ掛け、引き抜くことで開放、逆に奥側へ突っ込むことで投入されます。
断路器操作時の禁止事項
負荷電流が流れている状態で、断路器を開放することは厳禁です。
これは、負荷電流が流れている最中に断路器を開放した時にアークが飛ぶためです。アークが飛んだ先が別の相の端子だった場合、相間短絡を起こします。
相間短絡起こすと、6600V等の高電圧の大電流が流れるので、爆発に近いレベルの大事故が起こることが想定されます。
操作方法
断路器を操作するときは、断路器の2次側につながっている遮断器を開放して負荷電流が無い状態を確保をするのが必須です。
また、念のために断路器の上位にあるPAS・UGSも開放して、1次側への電源供給も断ってから断路器を操作することを推奨します。
安全確保のためにある装置ですが、正しく操作しないと危険ですので、停電操作時、開閉操作時の手順の遵守は必須です。
励磁電流程度は断路器でも遮断できますが、他に負荷電流が流れていない保証をするのは難しいので、余程の事情が無い限りは、遮断器を開放して電流を完全遮断してから断路器を開放する手順を遵守することをお勧めします。
停電操作手順
1.断路器の二次側に繋がっている遮断器を開放して無電流にする。
2.PAS・UGSを開放する。
3.断路器の1次側・2次側の両方を検電器で検電し、無充電であることを確認する。
4.断路器を開放する。
5.アースフックで、電荷を地面に逃がす。
6.断路器の一次側に接地線を取り付ける。
※※※※※※※※※※※※ 補足 ※※※※※※※※※※※※
1.で初めに遮断器を開放する理由は、断路器の2次側に繋がっている遮断器を開放することで、負荷電流を遮断することができるためです。
この操作をやった後、電流計が0[A]を指していることを確認するのも良いでしょう。
2.断路器の二次側の負荷電流が遮断できていれば、必須工程ではないかもしれません。
しかし、PAS・UGSを開放しておくことで、断路器の1次側に充電される電源を無くすことができるので、万が一の事故も防げます。
3.遮断器の操作忘れや、断路器から想定外の負荷がつながっていて断路器に負荷電流が流れてしまっていた場合、それに気づかずに開放してしまうと危険です。
そのため、1次側、2次側ともに充電されていないことを確認し、安全が確保できたことを、検電することで確かめます。
4.上記1.~3.の手順をこなすことで、断路器の1次側、2次側の安全を確保できたので、ようやく断路器が開放出来ます。
5.断路器の開放直後は、残留電荷があります。アースフックを使って、残留電荷を地面に逃がさないと作業者が触れた瞬間に感電します。
高圧の残留電荷による感電は非常に危険ですので、重要な工程です。
6.断路器に接地線を取り付けて、上位のPAS等が誤投入されてもキュービクル内に居る作業者の安全を確保します。上位のPAS等が投入された際、接地線を二次側に取り付けていると、DSの一次側の刃受けが充電部露出となり、完全の危険性があります。そのため、一次側に取り付けます。
また、切り離した電線路でも、電磁誘導・静電誘導を受けて充電してしまう可能性があります。充電してしまった状態で人が触れると非常に危険であるため、接地線を取り付けて安全を確保する必要があります。
復電操作手順
1.接地線を取り外す。
2.断路器を投入する。
3.PAS・UGSを投入する。
4.遮断器を投入する。
※※※※※※※※※※※※ 補足 ※※※※※※※※※※※※
1.接地線を取り外す工程で、接地線を外し忘れて電源投入してしまう事故が全国で年何回か起こっています。接地線を外し忘れると、接地線を通して相間短絡が起こるので、注意しましょう。
推奨事項
相間バリアを取り付ける
①アークが飛んでも、短絡する可能性を下げられる
②小動物が相間をまたがるように触れてしまい、短絡事故が起こる可能性を下げられる
断路器解放後に取り付ける接地線は、出来るだけ太い物を用意しましょう。
接地線が細いと、短絡事故時に十分な短絡電流が流れ切らないため、OCRの瞬時要素が働かず、短絡事故の継続時間が長くなる可能性があるためです。
断路器の老朽化
長年使っていると老朽化してきます。
老朽化すると、次の様なことが想定されます。
・動作が鈍くなり、開閉ができなくなる
・摺動接触部が接触不良を起こして発熱する
開閉操作時に動作が渋くなってきたら、交換すべきでしょう。
関連規格
・JIS C 0617 電気用図記号
参考書
高圧受電設備の色んな機器の写真や、解説図が多く、始めて保守管理に携わる人でも学びやすい本です。初心者向きです。
部下や後輩の教育資料にするのにも丁度良いと思われます。
電気設備の技術基準とその解釈について分かり易く解説されている一冊。
電気管理技術者必携は、電気管理の実務に役立つ本です。
実務を通してある程度知見を得ている人が、更に深く電気管理を学んで行くのに役立ちます。
端的に言うと、中級者向きです。
内線規程です。
電気設備に関する技術基準を定める省令や電気設備技術基準の解釈で不足する部分を具体的に補完する民間規格です。法的拘束力がある規格ではありませんが、設備設計、電気工事において、まず初めに参照するルールです。
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