絶縁抵抗とは
もし、電線が向き出しで配線されていたとすると、様々なところで漏電が起こります。
漏電によって熱を持つことで火災が起こったり、漏電に触れた人が感電したりする様な大きな問題が起こります。
それを防ぐために、電線は、導体部分を抵抗値の大きなビニル等で作られた被覆の中に収めることで、電線導体からの漏電が起きないようにしています。
この被覆が持つ抵抗を、絶縁抵抗と呼びます。
絶縁抵抗値が高ければ、オームの法則から漏電電流が小さくなることがわかることでしょう。
そのため、安全の確認のために絶縁抵抗測定を行います。
絶縁抵抗値は1,000,000[Ω]の単位を基準にしています。
1[MΩ]=1,000,000[Ω]であることから、絶縁抵抗測定器をメガーと呼びます。
絶縁抵抗測定器
選定基準
①電圧レンジ
125V / 250V / 500V / 1000V のレンジがあること。
100V系統には125V、200V系統には250V、400V系統には500V
高圧には1000Vを印加して試験するため、これらのレンジは必須です。
②表示
デジタル表示とアナログ表示があると思います。
どちらが良いかは、好みによります。
暗いところで作業することが多い人は、バックライトLED付を買った方が便利です。
③価格
安いに越したことはない
絶縁抵抗測定器のオススメ
低圧メガーのオススメ
・欲しいレンジ(50V / 125V / 250V / 500V / 1000V)がすべて揃っています。
・バックライト表示があるので、暗所・夜間作業にも使えます。
・プローブのケーブルが長いので、しまうときに少々面倒。
高圧メガー(5000V)のオススメ①
・5000V以外のレンジもある。
・重量が1.7kg(軽い)
・5000Vメガーとしては、一般的な価格
高圧メガー(5000V)のオススメ②
・5000Vまで、10V or 25V単位で出力電圧を調整できる。
→ 一気に5000Vを印加すると危なさそうな系統にメガーをかけられる
・重量が1.7kg(軽い)
・価格は超高い
・個人的に欲しい(願望)
絶縁抵抗測定
絶縁抵抗測定方法
- 測定対象に電圧が来ていないことを確認
メガーを開始する前に、測定対象に電圧が来ていないことを確認してください。
電圧が来ている状態でメガーをすると、電気事故の元となり、非常に危険です。
- バッテリーチェック
メガーのバッテリーが不足していたら十分な電圧を印加できないため要確認です。
- 電圧レンジの設定
不足した電圧レンジで測定しても、正しい絶縁抵抗値が測定できません。
過剰な電圧レンジで測定すると、測定対象を破壊する可能性があります。
そのため、測定対象の電圧系統に応じたレンジを確実に設定しましょう。
- 接地の確認
メガーの接地プローブと、測定プローブを一度短絡させ、0MΩが出ることを確認します。
ここで0MΩが出ないと、
・メガーの本体とプローブの接続不良
・メガーのプローブケーブルの断線・不良
等の可能性があり、正しい測定をすることができません。
- 測定開始
測定対象にメガーの測定プローブを当てて測ります。
〇測定値上限を表示する場合は良好な状態です。
△10MΩを切るような場合は、絶縁抵抗値の低下に注意しましょう。
前回、前々回の測定結果と比較して、低下傾向なのか、
維持しているのかを確認し、改善の必要性を検討しましょう。
×0MΩ等の、省令の基準値を下回る場合は危険です。
状況を確認して改善方法を検討しましょう。
絶縁抵抗測定しては行けない機器
インバータ
インバータにメガーを当てると故障します。
インバータに接続されたモーターの絶縁測定をしなければならない場合、
次のような手順で実施することを推奨します。
1. 盤の端子台からモーターを離線し、モーター単体にしか電圧が掛からないようにする。
2. モーターに絶縁測定をする。
計装機器
計装機器は電子回路の塊です。
出来るだけメガーを当てない方がいいでしょう。
絶縁抵抗測定すると焦る機器
保護ダイオードが入っているような系統にメガーをかけると、測定結果が0MΩになることがあります。
保護ダイオードは、雷サージ等の過電圧から回路を保護するための素子です。
制限電圧を超えていると、保護ダイオードが導通することで、過電圧を回避します。
その結果、0MΩになります。
機器の設置工事をした後の回路で、0MΩが出た場合、過電圧保護回路が入っていないか確認した方が良いでしょう。(すげー焦った。)
回路にツェナーダイオードのようなシンボルが無いか探しましょう。
【注意】高圧系統のメガーについて
電気の年次点検では、6600Vの高圧系統の電線に1000Vメガーを当てて絶縁抵抗値の確認して終わりという場所は多いかと思われます。
しかし、2000MΩ以上という結果が出たとしても、安心はしてはいけません。
2000MΩ以上と出ていても、実際は絶縁が悪くて地絡事故が発生したという例が多いためです。
2000MΩ以上なのに地絡が起きる理由
メガーを当てる電圧が不足しているためです。
線間電圧6600Vの電線における相電圧は3810Vです。
その系統に1000Vメガーを当てても、使用電圧における1/4の電圧しか印加されません。
絶縁破壊は印加電圧の影響が大きいです。
そのため、使用電圧よりも低い電圧で測定した結果が良くても、安全の担保にはなりません。
その結果、1000Vで2000MΩ以上の結果が出ても、地絡事故の発生につながってしまいます。
対応策
法的に推奨している方法ではないですが、5000Vメガーを当てて問題ないという結果が得られれば、地絡事故のおそれは少ないと思われます。
ただし、5000Vを印加した際に、絶縁破壊の状況が進行してしまっては元も子もありません。
20年を超えるようなケーブルの場合、その健全性を5000Vメガーで測定して確認するよりは、更新工事を検討した方が良いでしょう。
メガーでしのぎたい場合は、電圧を徐々に上げられるメガーで測定すると良いでしょう。
絶縁性能に関する関係法令
低圧の電路の絶縁抵抗値の基準は、省令で定められています。
これは漏電している箇所に人が触れてしまったときの影響を加味して決められたものです。
高圧・特別高圧の電路の絶縁抵抗値の基準
法律では、絶縁抵抗計測定(メガー)による基準は規定されていません。
耐電圧試験を実施して絶縁性能が担保されていることを確認する必要があります。
新規にケーブルを敷設する、スイッチギアを設置する等の場合には、耐圧試験の実施が必須です。
電気設備の技術基準の解釈
第15条:高圧又は特別高圧の電路の絶縁性能
第16条:機械器具の電路の絶縁性能
どちらも、絶縁性能を測定するための耐圧試験の電圧に関する記述です。
低圧電路の絶縁抵抗測定(低圧電路の絶縁性能の基準)
電気設備に関する技術基準を定める省令 第五十八条
低圧の電路の電線相互間及び電路と大地との間の絶縁抵抗は、開閉器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに、次の表の上欄に掲げる電路の使用電圧の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる値以上でなければならない。

※対地電圧
接地式電路においては電線と大地との間の電圧、非接地式電路においては電線間の電圧をいう。
この絶縁抵抗値は、人体に流れても問題のない電流値から、オームの法則で計算された抵抗値です。電流値を1mAとしたとき、次式で計算されます。
・100V/1mA=0.1MΩ
・200V/1mA=0.2MΩ
・400V/1mA=0.4MΩ
150V・300Vが区切りとなっていますが、実際に使われている電圧は、100V/200V/400Vなので、上記の計算で十分だろうと思います。
電気設備の技術基準の解釈 第14条第1項第一号
省令第58条によること。





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