概要
直流機の電機子反作用に関する論説問題です。
電機子反作用の原理と、その対策に関する問題です。
基本的な内容で、電機子反作用に関する全体的な理解が出来るような良問です。
キーワード
直流機、電機子反作用、補極、補償巻線、進角調整
問題
(1) 直流発電機や直流電動機では、電機子巻線に電流を流すと、電機子電流によって電機子周辺に磁束が生じ、電機子電圧を誘導する磁束すなわち界磁磁束が、電機子電流の影響で変化する。これを電機子反作用という。
(2) 界磁電流による磁束のベクトルに対し、電機子電流による電機子反作用磁束のベクトルは、同じ向きとなるため、電動機として運転した場合に増磁作用、発電機として運転した場合に減磁作用となる。
(3) 直流機の界磁磁極片に補償巻線を設け、そこに電機子電流を流すことにより、電機子反作用を緩和できる。
(4) 直流機の界磁磁極のN極とS極の間に補極を設け、そこに設けたコイルに電機子電流を流すことにより、電機子反作用を緩和できる。
(5) ブラシの位置を適切に移動させることで、電機子反作用を緩和できる。
答え
(2)
解説テキスト リンク
回答の解説
(1) 直流発電機や直流電動機では、電機子巻線に電流を流すと、電機子電流によって電機子周辺に磁束が生じ、電機子電圧を誘導する磁束すなわち界磁磁束が、電機子電流の影響で変化する。これを電機子反作用という。
電機子反作用の原理を説明しており、正しい記述です。

1.電機子の磁束

図2.合成磁束

図3.電機子全体の合成磁束
図1.
電機子に電流が流れると、電機子の周囲に磁束が発生します。
図2.
界磁磁束と、電機子磁束が合わさります。
この二つの磁束のベクトルを合成すると、合成磁束になります。
左図のように、電機子に対する位置によって、合成磁束のベクトルの向きと大きさは異なります。
図3.
電機子全体の合成磁束を線で描いた線です。
(2) 界磁電流による磁束のベクトルに対し、電機子電流による電機子反作用磁束のベクトルは、同じ向きとなるため、電動機として運転した場合に増磁作用、発電機として運転した場合に減磁作用となる。

界磁磁束と、電機子電流による磁束は、電機子導体の位置によって合成磁束の向きは異なります。
そのため、磁束のベクトルが同じとなるという表記は間違いです。

電動機、発電機どちらで使用する場合でも、電機子反作用によって電気的中性軸が傾きます。
電気的中性軸が傾くことによって、減磁作用が起こります。
電機子として運転した場合は、電気的中性軸が回転方向側に傾きます。
発電機として運転した場合は、電気的中性軸が回転方向の逆側に傾きます。
(3) 直流機の界磁磁極片に補償巻線を設け、そこに電機子電流を流すことにより、電機子反作用を緩和できる。

補償巻線による電機子反作用の対策として正しい記述です。
補償巻線と、電機子巻線を直列に接続することで、補償巻線は電機子電流の大きさに比例した磁束を発生することが出来ます。
その結果、負荷変動に対応することが可能になります。
(4) 直流機の界磁磁極のN極とS極の間に補極を設け、そこに設けたコイルに電機子電流を流すことにより、電機子反作用を緩和できる。

補極による電機子反作用の対策として正しい記述です。
補極の巻線と、電機子巻線を直列に接続することで、補極は電機子電流の大きさに比例した磁束を発生することが出来ます。
その結果、負荷変動に対応することが可能になります。
(5) ブラシの位置を適切に移動させることで、電機子反作用を緩和できる。

進角調整による電機子反作用の対策として正しい記述です。
電機子反作用によってずれる電気的中性軸の位置を予め予測しておき、そこをブラシの接触点とすることで対策する方法です。
電気的中性軸は、電機子電流の大きさによって変化するので、負荷変動があるような直流機には対応できません。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験 機械科目問1
参考書
イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。
問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。
電験三種の領域をずっと超えた先の話を9割方しているので、電験三種の勉強の参考書としての購入はおすすめしません。
直流電動機について、ありとあらゆる事を書き記していった一冊です。
この本より詳しい本は少ないと思いますので、直流電動機の設計を学ぶ人に取っては良い本かと思われます。
感覚的には、研究論文化する内容ではないけど、後世には残しておきたいと思ったことをまとめたというような感じでしょうか。
文章の癖は強いので、もし買う場合はサンプルを読んでから購入することを推奨します。







コメント